シュウは勢いでギルドを出たとき酒を飲んでない事に気付き、少しだけ後悔していた 扉から数歩歩いた所で立ち止まりギルドのほうを振り向く あいつが血相かえて追いかけてくるのを期待したが、いつまでたってもあいつが出てくる様子 はない …さすがに飛び出したのはまずかったか… ギルドに戻ろうかとも考えたが、それもなにか恥ずかしい気がしたのでやめにした それに、もとはあいつが俺との約束を忘れたのが原因なんだ ここで俺がのこのことギルドに入れば俺が悪いみたいになるじゃないか ここはあいつのことは忘れて明日の準備をする為に早く帰ろう そうだ、それがいい 俺は踵をかえし、ギルドを後にする 明日、日の出とともに俺は別の街に出発する事になってる 理由はごく簡単なものだ、ただハンターとしての質を上げたいからだ 今いるこの街ではギルドこそあるものの、そこに依頼される内容が不満である 小さなところであるがゆえ、どうしても簡単なものになってしまうのだ 大型のモンスター討伐依頼もなくはないが、せいぜいイャンクック止まり レイア等の飛龍討伐依頼がくることはほとんどないと言っていい ま、あいつはそれを失敗したんだがな 別の大きい街に行けばそういう依頼はごろごろしている ハンターの質を上げるにはもってこいなんだ 目指すはあの時のハンターだ!! 道なりに歩くと屋根に付いている煙突から白い煙を上げているお店にたどり着いた カウンターが設置されており、その上には白いアイルーが幸せそうに寝ている 「すいませーん」 俺は店の奥に向かって声をかける 店の中は色々な鎧やら武器やらでいっぱいになっていた 炉があるらしく、奥はぼおっと赤く光っている 「…あいよー!……なんだシュンかよ」 呼びかけてから少し、店の奥から金槌を持ちながら出てきた女性が出てきた 加工屋の店主のアオイさんだ 癖のある髪を結いつけ、顔にはさきほどまで作業をしていたのか炭が付いていた この街が出来たときからある加工屋で、街のハンターはほとんどここで注文している 彼女はここの親父さんの娘だそうで、二代目としてこの店を経営している 加工屋とは、ハンターが身に着ける武器や防具などを作る場所だ ハンターがモンスターを狩ったさいに手に入れた鱗や爪などを料金をもらい加工する 武器、防具ひとつで製造法が異なってくるので、知識と経験がものをいう 作る工程にとっても普通の人なら五分もたたずにリタイアするほどの重労働 それを女性なのに普通にこなしてしまうこの人に昔は驚いたものだ 「俺で悪かったですね…、ところでアレ出来てます?」 「ああ、今さっき完成したトコだよ」 そういうとアオイさんはいそいそと店の奥に戻っていった 加工屋に注文してもあっというまに武器防具が出来上がる…わけもなく、普通の 加工屋なら二日三日待たされる事が多い それはモンスターの素材の扱いの難しさが原因である 火に弱くて形状が変化してしまったり、固すぎてなかなか削れなかったりするのだ 俺もアオイさんに昨日頼んでおいたのだが、まさか出来てるとは思わなかった そういうところがいつもここを利用する理由なのだろう 「はいおまたせ!」 奥からアオイさんが細長い包みを持ってやってきた やはり仕事の速さには驚愕しっぱなしだ 俺は細長い包みをアオイさんから受け取った 包みを手にした瞬間、ズシリと重さを感じる 「なんか不満な事があったら言ってくれよ?」 震える手で包みを開ける 結び目を解くのに若干時間がかかったがなんとか開けられた 開いた口からそれの柄の部分が出てきた そこを右手で掴み、いっきに引き抜く 出てきたのは大人一人分くらいの長さのある太刀だった シュイン……… 左手で鞘を外すと見事なまでに研ぎ澄まされた刀身が出てきた 刃は日光を受けてまばゆく光り、太刀を凝視する俺の顔までも映っていた 「…はは、不満なんて…出てこないって…」 そのとうりだった むしろ絶賛したくて勝手に口が動きそうだったくらいだ それほどまでに俺は、この太刀に見入っていた 「『鉄刀 神楽』たしかに渡したぜ?」 加工屋を去り、俺は自宅への道を歩いていた 手にはさきほどの太刀『鉄刀 神楽』 太刀とは、大型の剣、大剣の派生から生まれた武器だ 大剣の圧倒的な破壊力をそのままに、息をつかせぬ連続攻撃がうりである 近接武器ではリーチが長く、使いようによってはどのモンスターにも対応できる武器 見た目のかっこよさからもハンター達に人気の種類だ しかしその攻撃面で強化された反面、大剣の分厚さがなくなってしまい モンスターの攻撃が防御できないという面ができてしまった まさに諸刃の武器であるので、太刀を用いるのならそれなりの技量が必要になってくるのだ 鼻歌まじりに道を歩いていると、ぽつんと立っている木の看板が目にとまった 普段なら別に気にもしないのだがそのときは違った なにやら看板に貼り紙がしてあるのだ この看板は結構昔からあるが貼り紙がしてあるのはかなり珍しいことだった 「ツワモノ…モトム……ん?」 貼り紙をよくみると討伐依頼のようだ、まだ新しい おおきく目を惹かれたのは、五桁を越す膨大な報酬額…ではなく、討伐するモンスターの名前 多くの犠牲をだし、やっとの思いで撃退法を見つけた相手 俺の村を襲った脅威の名前が、そこに載っていた 「…ラオシャンロン」 古くからこの世界に住む巨大龍 貼り紙はその撃退ではなく『討伐』としての依頼だった 場所は偶然にも、シュンが明日出発先に決めていた街 シュンは穴が空くほどその貼り紙をすみからすみまで見たあと踵をかえして走り出した ラオシャンロンを討伐したとなればギルドに認めてもらえるかもしれない そうすればあのハンターの事がわかるかもしれないし、近づくことが出来るかもしれない ドキドキする胸を押さえながら走り続ける だけど、あいつはどうするんだ……? 不意にギルドに残った相方の事が頭をよぎる いくら喧嘩したとはいえ、長年一緒にいた相方だ、戻って知らせようかと考えた だがその考えに反し足は止まらない 今は相方より明日の事が勝っているようだった それにあの看板はあいつの帰り道に立っているから嫌でも目に付くはずだ そう自分に納得させ頭の隅に置くと、さらに速度あげ、砂利の混じる道を走っていった もうすぐ陽が落ちようとしていたのが、横目で見えた